令和六2024年に発行される新一万円紙幣の「顔」として選ばれた渋沢栄一(しぶさわ えいいち)は、その名著『論語と算盤』に代表される道徳と経済の両立を提唱した近代実業界の先駆者として注目を集めています。
令和三2021年放映予定の大河ドラマでは主人公にも選ばれるなど人気急上昇中の栄一ですが、そんな国民的なヒーローが、どうして今まで紙幣の「顔」に選ばれなかったのでしょうか。
印刷技術の発達で解消された「ヒゲ問題」
結論から言うと、栄一が紙幣の顔として選ばれなかった理由は「ヒゲがなかったから」だそうです。
現代人からするとさっぱり意味が分かりませんが、かつては印刷技術が未熟だったため、デザインを細かくすることで偽造の防止を図っていた(※粗悪な印刷機だと、ヒゲの細かいデザインで印刷が潰れるので、偽造を見抜きやすい)のでした。
そう聞くと「だったら、現在一万円紙幣の顔に使われている福沢諭吉(ふくざわ ゆきち)はどうなんだ。彼もヒゲがないではないか」という指摘があると思いますが、それは印刷技術の発達によってデザインの細かさに依存しない偽造防止が可能となったためです。
それによって元からヒゲのない女性も紙幣の顔に選ぶことが可能となり、明治時代の作家・樋口一葉(ひぐち いちよう)が五千円紙幣に使われています。
※ちなみに、紙幣の顔となった女性は一葉が初めてではなく、明治十四1881年に神功皇后(じんぐうこうごう)が採用されているほか、平成十二2000年に発行された二千円紙幣の裏面には紫式部(むらさきしきぶ)が印刷されています。