平安時代から続く「衣替え」実は穢れを祓うための儀式でもあった一大イベント

湯本泰隆

「衣替え」。近年は温暖化の影響で、昔とは衣替えの時期が変わってきていますが、季節がまた一つ移り変わったことを服装が教えてくれる、四季のある日本の風物詩とも言えるでしょう。

この衣替え、洋服を着替えるというイメージのせいでしょうか。日本に洋装が入ってきた近代以降になって行われるようになった風習だと思われていることがあるようです。

しかし、衣替えの歴史は少なくとも1000年ほど前、平安時代まで遡ることが出来ます。中国の宮廷から伝わってきました。しかもかつては、宮中の大切な儀式として受け継がれてきたのです。

あまりそういうイメージがないかもしれませんが、衣替えはれっきとした日本の伝統行事なのです。

穢れを祓うためでもあった「更衣」

平安時代、宮中ではおおよそ半年ごとにまとう服を替え、さらにいつもより念入りに掃除をして気持ちを入れ替える習慣がありました。これを「更衣」と呼んでいました。更衣は、夏と冬、1年のうち2度行われていました。この時代、着替えるほどたくさんの服を持っていた層はごくわずかだったため、この儀式は宮中の貴族などごくわずかの人に限られて行われていました。

更衣の目的は、季節によって服を変えていき、暑さや寒さに対応していこうとすること、そしてまた「穢(けが)れ」を祓うことにありました。

厄や災いを呼ぶものとされる穢れは、だんだんと家や心身にたまっていくものと思われていました。だからときには一度に祓う必要があります。これを「大祓」といいます。更衣は日本から古くある「大祓」の概念と結びつき、宮中から「厄」を一掃するための一大イベントであり、重要な神事となっていったのです。

2ページ目 幕府によって衣替えの時期が指示されていた

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