日本古来の精神を象徴してきた「武士道」。そんな武士道と切ってもきれないもの、それは切腹です。切腹は、鎌倉時代の武士の誕生とともに確立し、かつては美徳とされました。
しかし人間の腹部は、心臓などのいわゆる急所とは異なるため、切腹は自殺の方法としては激しい苦痛を伴います。そのため、本人と別に、介錯人といって後ろから首を打ち落とす役目が必要でした。
現代人の感覚からすれば、喉をつく方が確実なような気もするのですが、なぜこのように腹を切ることが美徳とされたのでしょうか。
魂の在り処
それは当時、人間の生命の本体、つまり私たちが魂と呼んでいるものが、腹部に宿っているとされたからです。そのためその部分を切り開いて、人様に赤心をさらけだすというような意味で切腹という作法が定着したようです。
それが死を恐れない勇気と結びついて、武士の死に様としてはもっとも理想のものという考え方が生まれたそうです。