♪夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉がしげる
あれに見えるは茶摘みじゃないか
茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠……♪※唱歌「茶摘み(作詞・作曲不詳)」一番より。
子供のころよく唄って、懐かしく感じる方も多いと思います(筆者もその一人です)。
日本人が古くから飲み親しんで来た、お茶が摘まれる(収穫される)風景を描写した心のどかな歌詞ですが、ふと疑問を感じた方も少なくないのではないでしょうか。
「ところで、八十八夜って何?」
そこで今回は、この八十八夜について調べたので、紹介したいと思います。
八十八夜=立春から88日目の雑節
結論から先に言うと、八十八夜とは立春(2月4日)からカウントして88日目に当たり、現代では平年で5月2日、閏年(例えば令和二2020年)だと5月1日となります。
(※本来は旧暦=太陰暦がベースでしたが、それだと年によってMAX半月もずれてしまうため、新暦=太陽暦でカウントされています)
普通は八十八夜を過ぎると霜が降りなくなりますが、時おり別れを惜しむような「別れ霜」や、油断し切ったところを襲う「泣き霜」が降りて農作物に甚大な被害を及ぼすことがあるため、霜害への注意を促すために八十八夜という雑節が作られたと言われています。
ちなみに、八十八夜に積んだ新茶は上等なもので「飲めば寿命が延びる」と喜ばれるため、母の日(5月第3日曜日)のプレゼントに選ぶ(ちょっと渋い?)方もいるようです。
見直したい、日本茶の魅力
そんな八十八夜にちなんで、日本茶業中央会が5月2日(閏年は5月1日)を「緑茶の日」に制定。併せて4月29日から5月5日を「緑茶週間」として日本茶の消費宣伝活動も行われています。
多様なドリンクが自由に飲める現代では「お年寄りっぽい」として敬遠されがちな緑茶ですが、お茶に含まれるカテキン等の諸成分には、生活習慣病予防やアンチエイジング、リラックス・安眠促進などの効能が認められており、若い方にもおすすめです。
♪日和続きの今日このごろを
心のどかに摘みつつ唄う
摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ
摘まにゃ日本の茶にならぬ……♪※前出二番。
渋みの中に豊かな甘みが感じられる、忙しい日々の合間に、心のどかな一服を楽しむのも悪くないと思います。
※参考文献:
金田一春彦 編『日本の唱歌(上)明治篇』講談社、1975年
陳舜臣『茶の話―茶事遍路』朝日文庫、1992年