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決死の覚悟で恋人を救出!満洲馬賊の女親分「満洲お菊」こと山本菊子の生涯【上】
幼くして身売りされた山本菊子(やまもと きくこ)は、朝鮮・満洲と流浪の青春を送り、シベリアのブラゴヴェシチェンスクにバー「オーロラ宮殿」を開業。
関東軍(日本軍)の諜報員として、酒場に出入りする色々なお客から情報収集に務める中、馬賊の頭領・孫花亭(そん かてい)に惹かれていきます。
(もう水商売から足を洗って、この人と一緒に幸せな家庭を築きたい)
そんな夢を想い描いていた菊子の元へ、急報がもたらされるのでした……。
孫花亭の危機を知った菊子、柳葉刀をすっぱ抜く!
「何ですって!?」
孫花亭が関東軍に逮捕され、処刑されるという報せを彼の部下より聞かされた菊子は、目の前が真っ暗になる思いでした。
「処刑は明朝との事でさぁ……姐さん、相手が関東軍じゃ相手が悪い。老大(ボス。ここでは孫花亭の意)にゃ申し訳ないが、ここは諦めるしか……」
「……馬鹿おっしゃい!」
菊子はカウンターに隠しておいた柳葉刀(いわゆる青龍刀)をすっぱ抜くや店内のお客に向かって振り回し、「今夜はもう閉店だよ!お代は要らないから、みんな疾々(とっと)と帰った帰った!」と全員追い払います。
「姐さん、無茶はおよしなせぇ。この土地で関東軍に逆らったら生きては行けねぇ。第一、この店のスポンサーは関東軍じゃありやせんか……」
「お黙り!」
柳葉刀をカウンターに突き立て、菊子は啖呵を切りました。
「関東軍が何さ、お上が何さ……今までアイツらはアタシらを利用こそすれ、幸せにしてくれた事なんて、ただの一度だってなかったじゃないの。あの人を見捨てるくらいなら、一緒に殺された方がよっぽどマシさ!」
そう言って店の裏手から馬を引き出し、颯爽と跨って鞭を入れます。
「命が惜しけりゃ、お家に帰って震えてな!」
ここまで言われて引き下がっては、満洲馬賊の名が廃る……孫花亭の部下たちも仕方なく、慌てて菊子の後を追って行ったのでした。
3ページ目 決死の覚悟で孫花亭を救出!その豪胆さから馬賊の女親分に