令和元2019年から発生・蔓延している新型コロナウィルスの早期終息を願って、近ごろ妖怪「アマビエ」のイラストをはじめ、様々なアレンジ作品(動画、マンガ、刺繍、ぬいぐるみなど)が俄かに流行しているようです。
このアマビエとは、一体どんな妖怪なのでしょうか。今回はその謎について紹介したいと思います。
「疫病が流行したら、私の姿絵を人々に見せよ」
時は江戸時代末期の弘化三1846年4月中旬、肥後国(現:熊本県)の海岸で不思議な現象がたびたび目撃されました。
毎晩、海の中から何か光り輝くものが出没しており、いったい何事かと役人たちが検分に来たところ、それが姿を現したそうです。
「私は海中に住む、アマビヱ(※以下、ヱ⇒アマビエで統一)と申す者です……」
いきなり人語を発したそれの姿は、足元まで伸びた真っ直ぐな髪に覆われ、その中に見える顔は菱形の目と嘴(くちばし)が特徴的で、鱗に覆われた身体を、鰭(ひれ)のような三本足が支えています(手は見えず、髪に隠れているのか元から存在しないのかは不明)。
どっからどう見ても妖怪ですが、人語を話す以上は何か伝えたいことがあるのだろう、と役人たちが耳を傾けていると、アマビエは話を続けます。
「今年から六年間は、各地で豊作となりますが、疫病も流行ってしまいます。その時は、私の姿絵を人々に見せて下さい……」
そう予言して、アマビエは海に戻っていってしまいました。役人は大急ぎで泳ぎ去っていくアマビエを描き写し、その出来事と絵姿が瓦版によって遠く江戸にまで広まったとの事です。
2ページ目 “鬱屈した世の中だからこそ、ユーモアを忘れずに”