前回のあらすじ
名前からして出オチ感たっぷりな物部目(もののべの め)ですが、気性の荒い雄略天皇(ゆうりゃくてんのう)をよくなだめて補佐し、政治分野に才能を発揮する一方で、武勇にも優れていました。
時は雄略天皇十八474年8月、伊勢国で叛乱を起こした朝日郎(あさけの いらつこ)の討伐に出た物部目たちですが、朝日郎の弓勢を前に総大将の物部菟代(もののべの うしろ)はすっかり意気消沈。
全軍を後退させ、双方にらみ合ったまま日が暮れたのでした……。
前回の記事
目力ハンパなさそう!「日本書紀」に登場する豪族・物部目の武勇伝を紹介【上】
決死の作戦で朝日郎を倒す
さて、戦線の膠着を打破するべく、物部目は菟代に進言します。
「私が朝日郎めを討ち取って参りましょう」
「しかし、彼奴の弓勢は侮れぬ……」
「……私に策がございます」
そう言って物部目は筑紫国企救郡(現:福岡県北九州市)の住人・物部大斧手(もののべの おおおので)に全身が隠れるくらいに大きく頑丈な楯を持たせました。これに隠れて矢を防ぎながら前進、ギリギリに迫ったら物部目が飛び出して朝日郎を仕留める作戦です。
もちろん、楯だけではなく二人とも鎧を二枚重ねに着込みます。痛いのは嫌なのでもっと防御力を高めたいところですが、これ以上着込むと動けなくなってしまうため、ちょっとくらいは我慢しなければなりません。
夜が明けて、物部目はいよいよ作戦決行。大斧手の持つ大楯に隠れながら、自身は大刀を構えて朝日郎との距離をグイグイ詰めていきます。
「来たな……!」
朝日郎が矢継ぎ早に射放つと、大楯はたちまち針の山。うち何本かは楯を貫通し、やがて二枚重ね着した鎧の装甲にも刺さり始めました。
「将軍、矢の上から矢が当たってバキバキ砕けてますぜ……」
「まだだ……まだまだ……」
近づくにつれ矢の勢いはますます強まり、ついに鏃が鎧を完全に貫通、肌に食い込んできました。
「痛てっ、ちきしょうめっ」
「もう少し……あと三……あ痛てっ……二……行くぞ!」
我慢も限界に達したところまで迫った物部目は、大斧手の大楯を朝日郎に投げつけさせ、一気呵成に吶喊(とっかん。叫びながら突撃すること)。
「うわぁぁぁ!うらゃぁぁぁ!おれゃぁぁぁ!」
勢いよく投げつけられた大楯を躱(かわ)した朝日郎は、慌てて弓に矢を番(つが)えるも間に合わず、物部目の繰り出す大刀によって討ち取られたのでした。