前回のあらすじ
前回の記事
その手があったか!人々の心を見事に掴んだ織田信長の「引っ越し」エピソードを紹介【上】
戦国乱世を駆け抜けた風雲児として、強烈な個性を輝かせた織田信長(おだ のぶなが)。若き日の「大うつけ」ぶりから「天下布武」の壮大なスケールまで、他の大名たちとは一線を画した信長ですが、その特徴…
時は戦国時代、尾張国(現:愛知県西部)を統一した織田信長(おだ のぶなが)は、北の美濃国(現:岐阜県南部)を攻略するため居城(本拠地)の移転を計画します。
その候補地として険阻な二ノ宮山(にのみややま)が発表されましたが、便利で快適な清州(きよす)から不便な山奥に引っ越すことに、家臣も領民も大ブーイング。
でも、信長に逆らうのは怖い……そこで渋々引っ越しの支度を始めたのですが……。
信長の「英断」で移転先を小牧山に変更
「……畏れながら、御屋形様。此度の移転にございますが……」
居城の移転期限が近づくにつれ、家臣や領民の不満が絶頂に達しつつある中、宿老たちが信長に再考を進言しました。
「うむ。そろそろ“潮時”じゃのう」
不満の声も一通り出そろい、みんなの怒りも諦めに変わろうとしているタイミングを読んで、信長は言います。
「……良かろう。そなたらの進言を聞き入れ、二ノ宮山への移転は取りやめて居城を小牧山に改める」
ここでいきなり出て来た小牧山とは、清州よりは北ですが二ノ宮山よりは南。しかも二ノ宮山のように山々に囲まれた険阻な場所ではなく、平野部を見晴らすように山一つが小高く盛り上がり、近くに川も流れているため、交通の便も決して悪くありません。
思いもよらなかった「英断」に、家臣たちは驚くやら喜ぶやら。二ノ宮山へ移住させられるものと諦めモードになっていた領民たちも、喜んで小牧山へと移住していったのでした。
3ページ目 実は信長に「居城を二ノ宮山に移す」つもりなど全くなかった