NHKの連続テレビ小説『わろてんか』では、ハイカラな都市だった戦前の大阪が舞台だけあって、ハイカラ食としてもてはやされたカレーが所々に登場しています。インド人男性直伝のカレー、文鳥師匠絶賛のカレーうどん、乙女組に振舞われた生卵が乗ったカレーと、さまざまなカレーがドラマを彩りました。本項では、これまでに登場したカレーの中でも“玉子カレー”について紹介していきたいと思います。
玉子カレーの元ネタは大阪名物のカレー?
ドラマ内に登場する食堂、万々亭のメニューである玉子カレーは、店が架空の場所なので同じものは食べられません(当たり前ですけどね)。しかし、玉子カレーの元ネタと思しき料理は食べられます。それが自由軒の名物カレーです。
自由軒は、大阪初の西洋料理店として難波センター街で明治43(1910)年に開店したお店で、ビフカツなどのハイカラな料理を出すお店として人気を博していました。カレーライスも人気メニューのひとつでしたが、当時は保温ジャーが無かったので温かいご飯とカレーを供する手段がないのが難点でした。
そこで開発されたのが自由軒の名物カレーです。ご飯は冷めていても熱いカレーと混ぜることによって、熱々のカレーをお客さんに出したところ、人気メニューとなりました。『わろてんか』でこうしたカレーが食べられているのが、大正から昭和にかけてのことなので時系列的にもピッタリなのです。