一泊900円!格安宿屋”木賃宿”は江戸時代の旅行ブームを支えた縁の下の力持ちだった

やたろう

前回、『本陣、旅籠に木賃宿…実はいろいろ選択肢があった、江戸時代の宿泊施設』で、格安で宿泊できる木賃宿について、さらりと触れました。この木賃宿は、読んで字の如くポピュラーな燃料費であった薪の代金を支払うことで宿泊できる手軽な宿でしたが、その手軽さが江戸時代における旅行ブームに貢献した一面もあったのです。

お金に困っても木賃宿があればへっちゃら!でも、寝具と食料は自弁です

木賃宿は明和年間(1764~1772年)に、江戸の下谷山崎町(万年町)で仁木某が始めたと言われています。木賃宿が設けられる場所は街道筋にあった宿場町の端の方で、豪勢な本陣や賑やかな旅籠とは一線を画した慎ましい宿屋でした。

宿泊客は相部屋で寝ることが多く、食事は持ち込んだ米を自炊ないしは宿の人に預けて炊飯して貰うのが一般的でした。寝具も持ち込みが基本で、客人は防寒用の上着や紙子と呼ばれる雨具など持っている衣類を布団代わりに用いました。

その代わり代金は破格の安さで、江戸時代後期では30文~50文でした。1文を30円くらいに換算すれば安くて900円程度で宿泊できたのですから、驚きですね。こうした木賃宿は、旅芸人や巡礼と言った金銭的に余裕のない人、ないしは旅の職人や行商などお金を節約したい人が多く利用しました。

3ページ目 弥次喜多コンビも利用した木賃宿

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