今も昔も男性は高身長ほどカッコいいとされることが多く、自分の努力ではなかなか解決できない部分ゆえに、多くの男性たちが悩んできました。
中にはそんな悩みをバカにする不届き者もおり、よせばよいのにトラブルの火種をまき散らかします。
今回は江戸時代の武士道バイブル『葉隠(葉隠聞書)』より、低身長をバカにされた水野監物(水野忠善か)のエピソードを紹介。心無い軽口に、彼は何と言い返したのでしょうか。
貴殿の首を我が足の下に……
「いやぁ、監物殿。『天は二物を与えず』とはよく言ったものですな」
水野監物に声をかけたのは、松平伊豆守こと松平信綱。第3代将軍・徳川家光の小姓として仕え、知恵伊豆と呼ばれた名臣です。
「……その意(こころ)は?」
「貴殿はまこと才知にあふれ、主君のお役に立てる逸材にござる。しかしながら、惜しいかな身の丈が小そうございますな」
そんなもの、一目見れば誰でも判る。いちいち言わずともよいではないか。じつに腹立たしい限りながら、怒れば相手の思う壺、かと言って笑って流せば臆病者……さぁどう答えましょうか。監物はこう答えました。
「まったくもって、仰せの通りにござる。然らば貴殿の首を叩っ斬り、我が足の下に継ぎ足せば少しは見栄えもするんじゃがのぅ……」
意訳すると「斬り殺すぞこの野郎」となります。軽口を彼なりのジョークで切り返したものの、これ以上踏み込んだらタダでは済まないでしょう。
さすが知恵伊豆も心得たもの、それ以上は深追いせず、ここらが潮時と笑ってごまかしたようです。