古来から恐れられる呪術「丑の刻参り」そもそもは良縁・心願成就が始まりだった【後編】

高野晃彰

江戸時代から現代まで延々と伝わっている怪異として有名な、呪術「丑の刻参り」。憎い相手を呪う儀式をすれば、自分が直接手を下さなくても災いや死をもたらせるという恐ろしいイメージがありますが、そもそもは、良縁・心願成就が始まりだったとも伝わります。

【前編】では、平家物語の「橋姫伝説」や室町時代の世阿弥の謡曲「鉄輪」など、「丑の刻参り」の由来と伝わる話をご紹介しました。

古来から恐れられる呪術「丑の刻参り」そもそもは良縁・心願成就が始まりだった【前編】

江戸時代のころから、人々の関心を集めていた「怪談話」。怖い話を聞いて背筋が凍りつく感覚を求めてか、現代でも夏になるとメディアで怪談や怪異などの特集が組まれます。怪談にはいろいろな話がありますが…

【後編】では、現在でも「丑の刻参り」に使用された「五寸釘を打ち込んだ跡」が無数に残る杉がある神社についてお話ししましょう。

観光客で賑わう京都・清水寺に残る「呪いの杉の木」

春夏秋冬、国内はもちろん海外からの観光客で賑わいをみせている、京都・清水寺。約1200年の歴史を誇り、世界遺産にも認定されている由緒正しい寺院ですが、その清水寺本堂の北側に、この地の地主神を祀る「地主神社」があります。

創建期は日本建国以前とも伝わり、京都でも最古の歴史を持つ神社です。主祭神は、日本神話に登場する大国主神(おおくにぬしのかみ)、父神は素戔嗚命(すさのおのみこと)、母神は奇稲田姫命(くしなだひめ)などで、現在では縁結びの神さまとして若い女性やカップルに人気のスポットとして、多くの人がお参りに訪れます。

その地主神社には「恋占いの石」がありますが、原子物理学者ライル・ベンジャミン・ボーストにより科学的な年代測定で「縄文時代」のものと判明しているそう。かなり昔からこの神社が存在していたことがわかりますよね。

そして、この地主神社には「いのり杉」「のろい杉」と呼ばれ、江戸時代に「丑の刻参り」に使われた五寸釘が打ち込まれた無数の穴が空いた杉の木が現存しています。

3ページ目 境内のおかげ明神の後ろにある「のろい杉・いのり杉」

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