俺たちの北条泰時、実は和田合戦の際に二日酔いだった件 『吾妻鏡』より【鎌倉殿の13人】

北条泰時(演:坂口健太郎)と言えば品行方正・謹厳実直を絵に描いたような人柄。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも権謀術数に走る父・北条義時(演:小栗旬)としばしば対立する様子が演じられています。

どこまでもまっすぐに理想を追求し続けた「俺たちの泰時」。しかし人間「なくて七癖」とはよく言ったもの。彼は大の酒好きだったようで、かの和田合戦(建暦3・1213年5月2~3日)にも二日酔いで参戦していました。

その都度「もう酒はやめよう」と誓うのですが、やっぱりついつい呑んでしまうのが酒飲みの悪い癖。

今回は鎌倉幕府の公式記録『吾妻鏡』より、そんな泰時の後悔エピソードを紹介したいと思います。

朦朧とする意識の中、豪傑・朝比奈義秀を迎え撃つ

時は建暦3年(1213年)5月3日、和田義盛(演:横田栄司)はじめ和田一族が討ち取られ、戦いは北条方の勝利に終わりました。

「いやぁ、皆さんお疲れ様でした」

昨日今日と激戦をくぐり抜けた仲間たちをねぐらうため、泰時はみんなを自宅に招きます。

「さぁさぁどうかお呑み下され……」

酒盃が行きわたったところで、泰時はみんなの前で宣言しました。

「お酒を勧めておいて何ですが、私は今後永久に禁酒しようと思います。と言うのも実は5月1日の晩に深酒をしてしまったからです。2日の『明け方』に和田の軍勢が攻めてきた際、何とか鎧兜を身に着け馬には乗ったのですが、意識が朦朧として戦さどころではありませんでした……」

ちなみに『吾妻鏡』によれば和田の軍勢が泰時らの守備する御所の惣門(正門)に迫ったのは酉刻(午後18:00ごろ)。前日に酒を呑んでいたにしても、そろそろ(むしろとっくに)二日酔いから醒めていてもバチは当たらない時間帯です。

……酉剋。賊徒遂圍幕府四面。摩旗飛箭。相摸修理亮泰時。同次郎朝時。上総三郎義氏等防戰盡兵略。而朝夷名三郎義秀敗惣門。乱入南庭。攻撃所籠之御家人等。剩縱火於御所。郭内室屋。不殘一宇燒亡……

※『吾妻鏡』建暦3年(1213年)5月2日条

要するに泰時はその日まるまる、ほとんど酔っ払って過ごしていたのでしょう。それだけ前夜に深酒をしたのか、あるいは翌朝に迎え酒でも食らったのか……。

2ページ目 今後はいっさい断酒いたしますから、どうかご加護を

次のページ

この記事の画像一覧

シェアする

モバイルバージョンを終了