昔から「男心と秋の空」なんて言いますが、とかく寵愛というものは移り変わりが激しいもの。
昨日愛されたからと言って、今日も愛してくれるとは限りません。だから権力者を取り巻く女性たちは、常に自分が成り上がる(入れ替わる)チャンスを狙ってバトルを繰り広げたのでした。
今回はそんな一人・妓王(ぎおう)を紹介。平清盛(たいらの きよもり)の寵愛を受けた彼女ですが、その情熱は永く続かなかったようです。
妓王たちの出自
妓王は平家に仕える江部九郎時久(えべ くろうときひさ)の娘として、近江国祇王村(滋賀県野洲市)で誕生しました。
母親は刀自(とじ)、妹に妓女(ぎじょ)がいたと言います。母娘そろって白拍子になったと言います。
刀自は戸主に通じ、女性(特に世帯主)に対する敬称。恐らく夫に先立たれてしまったため、生活のためやむなく白拍子となったのでしょう。
離縁された可能性も考えられますが、それなら政略結婚の駒に利用できる娘を手放すとは考えにくく、前者の方が可能性は高そうです。
その後、京都で名を上げたと言いますから、夫に先立たれる前は芸能に通じていた=芸能を学ぶ余裕がある家庭環境で暮らしていたものと思われます。
妓王も妓女もいわゆる源氏名と思われ、いずれも本名は不詳。妓王は「芸妓の王」妓女は単に「芸妓の女」という意味。姉はともかく、妹の名前はもうちょっと考えてあげて欲しいところです。
故郷の祇王村は「妓王の故郷だから」この名前になったのか、あるいは祇王村(義王村)の出身だから彼女が妓王と名づけられたのかも知れません。