このスケベ小説はどこがすごい?浮世草子作者・井原西鶴の代表作『好色一代男』が持つ大きな意味

雲川ゆず

『好色一代男(こうしょくいちだいおとこ)』……この一度見たら(聞いたら)そう簡単には忘れられない名前。歴史の教科書にも載っているため、覚えているという方も多いのではないでしょうか。

『好色一代男』は江戸時代の浮世草子作家である井原西鶴(いはらさいかく)の処女作であり代表作でもあります。話の内容は言ってしまえば“スケベ”なものですが、これがどうして教科書にも載っているのでしょう?

今回は、この作品が持つ大きな意味について詳しくご紹介したいと思います。

作者の井原西鶴について簡単におさらい!

『好色一代男』の作者は井原西鶴です。江戸時代に大坂で活躍した浮世草子・人形浄瑠璃作者であり俳諧師でもありました。もともとは一昼夜のあいだにできるだけ多く句を作り、その数を競う興行である「矢数俳諧」の創始者でした。

天和2年(1682年)に処女作『好色一代男』を発表し、その後も『好色五代女』『武道伝来記』『日本永代蔵』など様々な作品を出版しました。

『好色一代男』の概要

『好色一代男』は、主人公の浮世之介(うき・よのすけ)が7歳から60歳までに経験した数々の好色を描く、彼の一代記(彼の54年間の恋愛遍歴)です。8巻8冊。54章の短編小説群からなっています。

この54章というのが1つのポイントで、この作品は『伊勢物語』や『源氏物語(こちらも54帖からなりますね)』の枠組みにならったと言われています。

『好色一代男』のすごさ

タイトルにもあるとおり、この作品で描かれているのは好色。しかしそんな“スケベ小説”が現代でも教科書に載っているのは、この作品が非常に画期的だったから。

それまでは“仮名草子”が一般的でしたが、それよりも娯楽性を強め、当時の風俗や人情の諸相を描き、一般庶民を楽しませたこの作品は、“浮世草子”という新しい小説のジャンルを生み出したのです。

いわゆる「普通の人」が物語の主人公になるというのも新しく、仮名草子が啓蒙的だったのに比べても、人々が魅了されたのがわかります。

いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本の歴史や日本文学に興味を持つきっかけになれば嬉しいです。

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