葛飾北斎や弟子が歴史上の人物や事件を描いた作品を集めた企画展「北斎で日本史 ―あの人をどう描いたか―」開催

Japaaan編集部

東京・墨田区にある「すみだ北斎美術館」で、企画展「北斎で日本史 ―あの人をどう描いたか―」展が開催されます。

本展は、日本の歴史に焦点をあて、葛飾北斎やその弟子などが歴史上の人物や事件を描いた作品を集めた展覧会です。

主に高等学校の日本史の授業で取り上げられる人物や事件を軸とし、当時の歴史観に基づき神話の時代から安土・桃山時代、そして北斎の生きた江戸時代の歴史的事象が描かれた作品、弟子の描いた明治時代の錦絵までを展示します。

本展のハイライト

コノハナノサクヤビメ

葛飾北斎『富嶽百景』初編 木花開耶姫命 すみだ北斎美術館

『富嶽百景』の最初のページに描かれた神。『富嶽百景』は北斎の富士図を約100図収載した版本で、本図はその最初のページに描かれたコノハナノサクヤビメです。衣服をチリチリとした線で表現するなど、北斎の描く美人画の特徴がみられます。

コノハナノサクヤビメは『日本書紀』や『古事記』に登場する神で、富士山麓にある浅間神社の御神体としてまつられています。

『古事記』や『日本書紀』などに記される神話は、江戸時代には日本の歴史の起源として考えられていました。<神話の時代>では、アマテラス、スサノオノミコトなど、神話に登場する神々などを紹介します。

仏教伝来

葛飾北斎『三国伝来記』第一図 すみだ北斎美術館

北斎が描いた仏教伝来の歴史的場面。

『三国伝来記』は善光寺(長野県)本尊の由来記の挿絵を北斎が描いたものです。本尊は百済(くだら)の聖明王(せいめいおう)から伝えられた仏像としています。本図は御簾の奥の欽明(きんめい)天皇へ、二人の百済の僧が鳳輦(ほうれん)を捧げている場面です。本尊の仏像は描かれていませんが、鳳輦の中にあると考えられます。

日本史の教科書で習う「仏教伝来」は、公式には百済の聖明王が欽明天皇に仏像や経典を伝えたといわれていることから、本図はまさに日本に仏教が伝わった歴史的場面といえます。

<古墳・飛鳥時代>仏教伝来や、聖徳太子、大化の改新など、古墳・飛鳥時代(3世紀中頃~645年頃)に関する人物や出来事が描かれた作品を展示します。

畠山重忠

葛飾北斎「畠山重忠」すみだ北斎美術館

一の谷の戦いで、馬を担いで断崖を降りたと伝わる大力・剛勇の鎌倉武士。

本図は軍記物語『源平盛衰記』に記された話に基づいて描かれたものと考えられます。

畠山重忠(1164~1205)は、平安・鎌倉時代初期の武士です。当初平氏軍でしたが、後に源頼朝に従い、源義仲追討などで活躍しました。北条義時と畠山重忠が登場する版本『星月夜顕晦録』も通期で展示します。

<鎌倉時代>では、源平の合戦も含め、執権となる北条氏などの人物、武家の争いによる社会不安の中で生まれた鎌倉仏教の開祖など、鎌倉幕府の時代(12世紀末~1333年)を描いた作品を紹介します。

上杉謙信と武田信玄

葛飾北斎『画本武蔵鐙』下 上杉輝虎入道兼信 武田晴信入道信玄 すみだ北斎美術館

北斎が描いた戦国大名の一騎打ち。

本図には、川中島の戦いの名場面として伝わる、上杉謙信と武田信玄の一騎打ちが描かれています。軍学書『甲陽軍鑑』には、“混戦のなか、白手ぬぐいで頭を包んだ武者が馬に乗って刀を抜き、突進して切りつけてきたので、信玄は立って軍配で受けた”と記されています。本図も、騎乗で切りつける上杉謙信と、刀を軍配で受ける構図など、この記述に近い描き方がされています。

<安土・桃山時代>では、戦国大名を描いた作品を中心に集めて紹介します。

徳川家康

二代葛飾北斎「徳川家康束帯座像」すみだ北斎美術館

浮世絵師が江戸幕府将軍を描いた珍しい作品。

北斎の弟子・二代葛飾北斎が徳川家康を描いた肉筆画です。浮世絵師が江戸幕府の将軍を描いた作品は珍しく、「恐惶頓首百拝 北斎拝写」の落款からは、敬意をもって描いたことがわかり、当時の人々の幕府への見方を示しています。

<江戸時代>では、現在からみると歴史的事象である朝鮮通信使など、北斎が実際に見たと思われる事柄も登場します。

企画展「北斎で日本史 ―あの人をどう描いたか―」は、2021年12月21日(火)~2022年2月27日(日)(※前後期で一部展示替えあり)の期間、すみだ北斎美術館で開催されます。

 
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