筆者は、医者にかかるときは大病院よりも個人病院派なのですが、個人病院でも腕のいい先生のところはいつ行っても患者さんで溢れていて、なかなか診察してもらうまで時間がかかってしまいます。
ところで、腕の悪い医者のことを日本語で「藪医者(やぶいしゃ)」と言いますが、それはどうしてでしょうか。なぜ「竹医者」とは言わないのでしょうか。
「ヤブ」という言葉は地名だった
かつてこの「ヤブ」という言葉は、但馬国(兵庫県北部)の養父(やぶ)というところにいる名医のことを指す言葉でした。ところが、あまりにも評判が高くなったことから「養父から来た医者」を称する偽物が横行し、いい加減な治療をして高額な治療代を要求するものが増加し、社会問題にもなってしまいました。
これがきっかけで、やぶ医者という言葉は腕の悪い医者を指す代名詞となりました。つまり、本来の意味とは逆転してしまったようなのですね。
これが、松尾芭蕉の弟子だった森川許六が江戸時代中期に編纂した『風俗文選』以来、「藪医者」という言葉の出所を説明するものと考えられてきました。