「今とりかへばや」のもととなった「古とりかへばや」
男女のきょうだいが性を入れ替えるという異色の王朝物語として知られる「とりかへばや物語」。
男女が性転換して生活?異色の輝きを放つ平安時代の王朝文学「とりかへばや物語」
男女のきょうだいが「性転換」したまま成長する物語平安時代の王朝文学の中でも、異色の輝きを放つのが『とりかへばや物語』。12世紀半ば〜12世紀末頃に成立したとされるこの物語の特徴は、何と言っても主人…
氷室冴子の小説で山内直美によって漫画化された「ざ・ちぇんじ!」や、さいとうちほの漫画「とりかえ・ばや」でも人気の作品ですよね。
実は、今私たちが読むことができる「とりかへばや物語」は、「古とりかへばや」の改作なのです。
「古とりかへばや」はすでに散佚してしまってもう読むことができないのですが、どんな物語であったかは、藤原俊成女が作者とされる鎌倉時代の物語評論「無名草子」から知ることができます。「無名草子」では「とりかへばや」と表記されていますが、便宜上現存する「とりかへばや物語」と区別するために両者を並べる際は「古とりかへばや」「今とりかへばや」と呼びます。
女君が男姿のまま出産
どんな内容だったのかというと、本筋は現存するものとあまり違いはなかったそう。ただ、
女中納言こそ、いといみじげにて、もとどりゆるがして子生みたるなどよ。また、月ごとの病、いと汚し。
「無名草子」(校注・訳:樋口芳麻呂「新編日本古典文学全集」/小学館より)
女君はすばらしいと評しつつ、「もとどりゆるがして子生みたる」つまり、女君が男姿で髪を男のように結ったまま子どもを出産するなんて、と酷評。「月ごとの病」、月経の描写もかなり汚らしかったようです。
そのほか、女君が一度死んだのに生き返るようなシーンもあったらしく、それが大げさだとも言っています。