「はなくそ」。あまり穏やかな響きとは言えません。「はな」とは言えど、「くそ」です。どうにも、穏やかではありません。漢字で書くと、その穏やかならざることは、もっと強烈なものとなります。
が、その「はなくそ」を、春先の涅槃図公開に併せて授与してくれるお寺があります。京都の真正極楽寺が、そうです。
「真正極楽寺」と聞いてもピンと来ず、「本物極楽寺」とか「元祖極楽寺」みたいな世界を連想する方もいらっしゃるかも知れません。通称は、真如堂。秋になれば、物凄い色の紅葉が拝めるにも関わらず、境内は無料で散策できることでも人気の高い、あの真如堂であります。
紅葉もいいですが、こちらのお寺は伽藍もすごく、立派。かの三井家が大檀家になっている為か、大きな本堂や三重塔がどどーんと建てられてます。お寺の中にある庭も、拝観有料ですが、また立派。大文字山が見える「涅槃の庭」に加えて、割と近年に作庭されたモダンな庭も魅力です。
で、春先に有料で公開される大涅槃図もまた、三井家の女性たちの寄進によって、宝永年間に制作されたというもの。で、この有料拝観でおまけみたいにもらえるのが、「はなくそ」なんですよ。
見ようによっては、かなりなショッキングビジュアルとも言えるお姿です。が、こちらの「はなくそ」、正体は、あられ。お正月に御本尊へ供えられた鏡餅のお下がりを、刻んであられに仕立てたお菓子だとか。漢字で書くと、「花供曽」。もともとは、仏様への供物という意味の「花供御」という言葉に由来するんだそうです。
「花供曽」、味つけは塩味ではなく、ほんのり甘め。涅槃図をありがたく拝んだ後、晴れた日とかに三重塔を見上げながら食べてると、なかなか真正に極楽だったりします。包みに入ってる「花供御」云々の由緒書きに向かって、「絶対ウソやろ」とか言いながらポリポリやってるうちに、春がやって来るというわけです。