食事とおやつの境界線を溶解させる、うどんの魔性。伊勢うどん、餅系食堂、そして香川の単なる袋うどん

Japaaan編集部

うどんはかつて、菓子屋で扱われてる時代がありました。

江戸時代の京都御所御用達商人を記した文書では、菓子商人とうどん・蕎麦・麺類各種を扱う商人が、同じカテゴリーに分類されてるといいます。その御所に菓子を収めていた虎屋には、うどんや蕎麦切の注文記録、出汁用の徳利が残っているといいます。理由は、よくわかりません。共に小麦粉を多様するため、仕入先が共通するとかの話かも知れませんが、とにかく昔は菓子とうどんが「似た者同士」と認識されてたわけです。

時代が下るにつれ「菓子は菓子屋」「麺は麺屋」と分業化が進んでいくわけですが、現代でも時折、菓子とうどんが近接することがあります。それも「うどんを食べた後のデザート」「うどんを使ったデザート」などではなく、何というか、もっと混沌とした感じで。食事とおやつの概念が入り混じる感じで。

伊勢うどんといえば「茹でるのに1時間かかる」という、とんでもなく太くて柔らかい麺が有名です。が、実際に食べると出汁、いや濃度と粘度からタレとしか呼びようがないですが、とにかくその甘さに衝撃を受けます。餅のような麺に、甘いタレ。まるでみたらし団子です。近接してます。食事とおやつが入り混じってます。

京阪神には「餅系食堂」と呼ばれる謎の食堂チェーンがあります。結束がゆる過ぎて当事者含め誰も実態がよくわからないチェーンなんですが、とにかく「力餅」「千成餅」「相生餅」と末尾に「餅」が付くこの食堂群、その名が示す通り、元々は餅屋・甘党。業務拡大で食堂化し、現在でも多くの店が甘党メニューと食堂メニューの両方を扱ってます。もちろん「きつねうどんとおはぎ」なんて注文も可能で、もちろんうどんとおはぎを交互に食べるのも当たり前。近接してます。食事とおやつが入り混じってます。

うどん県・香川ではかつて、単なる袋うどんをおやつとして食べていたそうです。甘味も辛味もつけず、本当にそのままのうどんをおやつとして食べていたそうです。もはや、近接や混沌どころの話ではありません。

食事とおやつの境界線を溶解させ、独特の食のスタイルを誘引する、うどん。ひょっとすると昔の人たちは、その魔性のようなものにこそ着目して、うどんを菓子と分類したのかも知れません。

うどん – Wikipedia

伊勢うどん – Wikipedia

力餅食堂 – Wikipedia

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