この秋から上野公園にある「西郷隆盛像」がライトアップされています。ライトアップされるのは銅像が作られた明治31年以来初めてのこと。
この西郷像は東京の代表的な名所の一つでもあり、西郷さんの面影を偲ぶことのできるものとして親しまれていますが、かなりデタラメな姿だと言われています。
あの犬の散歩をしながらノシノシと歩くさま。なんだか休日の西郷さんののんびりとした一面を見るようでほのぼのといたします
が、あの姿はワンコのお散歩をしているわけではなく、兎狩りに出かけている様子を描いたもの。また司馬遼太郎先生によれば、犬を連れているのは暴漢に襲われた時にオトリになってもらうためで、自分は走って逃げられるように警戒をしているという説もあります。
そしてそんな緊張感の漂うシーンのはずなのに、西郷さんはぞろりとした浴衣姿。この姿に異を唱えたのが他でもない西郷さんの奥さんでした。
銅像の除幕式に招待されてこの西郷像の姿を見た婦人は、「ウチの人はこんなだらしない姿で外をウロウロするような人じゃないわよ!」とかなりビックリしたそうです。確かに浴衣というのは家着。まして武人として名を馳せた西郷さんは、人前ではビシッとした軍服を着ていたようですから、浴衣姿の銅像というのは奥さんから見ればバスローブ姿のように映ったのかもしれません。
そして肝心の西郷さんの顔も似ていないと言われています。西郷さんが大の写真嫌いで、生前一枚も写真を残さなかったのは有名な話。もっと優しげな顔だったようです。
この銅像は西南戦争で朝敵となってしまった西郷さんの名誉回復のために作られたのですが、当時の西郷ファンにとってはイメージと違うとかなりのブーイングがありました。
しかし100年以上経った今では、もう私たちにとってはあの姿が西郷さんですよね。バスローブでワンコを連れた西郷さん、スポットライトを浴びると、夕日に向かってお散歩しているような輝かしい姿になることでしょう…。