高級品だったかき氷
かき氷の歴史はとても古く、平安時代にまでさかのぼります。『枕草子』には金属製の器に氷を刃物で削った「削り氷(けずりひ)」に甘葛(あまかづら)という甘いシロップをかけたものが「あてなるもの」として紹介されています。
この「削り氷」が現代のかき氷の原型と言われています。
しかし、当時は冬に雪や氷を氷室で保存するしかなく、「削り氷」は貴族しか口にできない高級品だったようです。
江戸時代になると、氷を保存する技術が発達しました。地下水の気化熱によって、気温が外気温よりも低くなる穴や部屋を利用した氷室という施設で、氷を保管するようになったのです。
氷室は日本各地に存在しており、その構造や規模は地域によって異なっていました。通常は朝廷や将軍家などの権力者のために管理されており、庶民にはあまり関係がなかったようです。
よって、かき氷も相変わらず将軍家や大名、豪商などの特権階級だけが楽しめるものにとどまっていました。当時は砂糖水や小豆餡などをかけて食べていたとか。
氷室に保存されていた氷は、食品の保存や医療、納涼などにも利用されていたようです。
ちなみに、かき氷の語源は「欠き氷」だと言われています。これは、冬に採取した天然の氷を氷室で保存し、夏に「欠けた氷」を食べていたからです。
しかし、この呼び方は「欠」が不吉なイメージを持つことから、平仮名で「かき氷」と表記するようになりました。