Japaaan読者の皆さんこんにちは。ライターの小山桜子です。2022年3月1日から東京国立博物館で特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が開催されています。
今回は空也上人の半生をおさらいするとともに、展示の中でも最も人気の高い作品の一つ、六波羅蜜寺の「木造空也上人立像」についてご紹介します。
空也上人と末法思想
そもそも空也上人とは、平安時代中期の浄土教の僧侶です。彼が活躍した900年代中〜後期は「末法思想」が常識でした。末法思想とは釈迦入滅からちょうど2000年経つ1057年に末法が到来し、災いと戦乱により世が滅ぶという思想です。
時は菅原道真公が太宰府に左遷された後、まだ藤原道長が天下人になる前の政権争いの時代。藤原純友の乱、平将門の乱など武士の反乱も続き、政情が不安定でした。
ただでさえ重税や飢饉で苦しい生活を余儀なくされているのに、これから更に災いが重なるという思想は民の心を更に不安定にさせました。
空也上人が広めた浄土教
そんな中で、空也上人が広めた浄土教とは「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで極楽往生できるという分かりやすいものでした。
空也上人は938年に上洛し、特別な修行や知識が必要ない浄土教を身分問わず誰にでも優しく教え、多くの民の心を救ったので「市聖(いちのひじり)」と呼ばれ多くの人に親しまれるようになりました。