よく度が過ぎることや、非常にしつこいこと等を「あくどい」なんていう言い方がありますが、一方で、色や味などが濃すぎることを指して「あくどい」ということもあります。
通常、「あくどい」は、「ずいぶんと、あくどいことをしやがるなあ」なんていうふうに、あんまりよい意味で使われない傾向のある言葉です。
そのせいでしょうか。漢字で書くと「悪どい」なんていう風に書くと思い込まれている読者の方も多いと思います。ところが、この「あくどい」は、漢字で書くと「灰汁どい」となります。「灰汁」とは、肉や野菜などをゆでるときに出てくる白く濁った泡のこと。
この「灰汁」と「クドい」という意味を合わせて「あくどい」という言葉になったと言われています。
この「あくどい」という言葉、江戸時代にはすでに使われていたようで、17世紀末に松尾芭蕉の弟子たちによって編纂された『俳諧炭俵集』にも、「同じ事老の咄しのあくどくて だまされて又薪部屋に待つ」という俳句が出てきます。
また、19世紀に為永春水によって書かれた人情本『春色梅児誉美』には、「ちっと悪毒天婦羅か」という下りがありますが、この「悪毒」は「あくどい」の意味だったと考えられています。
「悪」「毒」という漢字を使いたくなるほどのくどさ、ということだったのでしょうか。
「あくどい」の語源についてはもうひとつの説があり、「飽きれるほどくどい」という言葉を短縮して「飽くどい」となったという見方もあるようです。
意外な言葉の語源に、とても驚きます。
参考