報道によると令和3年(2021年)2月、カシオ計算機の耐衝撃ウォッチ「G-SHOCK」に「勝色(かちいろ)」を採用した3モデルが登場するそうです。
日本の伝統色として古くから武人たちに愛されてきた「勝色」ですが、果たしてどのような色なのでしょうか。今回はそれを紹介したいと思います。
時代を越えて武人たちに愛された勝色
勝色とは深い紺色を指し、平安時代の褐衣(かちえ)に由来すると言われています。
この褐衣は貴族に仕えた下級武官たちの装束(狩衣の一種)で、藍や紺で染め上げた褐(ゴワゴワした粗末な麻布)を、よく搗つ(かつ。叩く)ことで光沢を出しました。
光沢を出すことで、粗末な生地にせめてもの高級感を与えたかったのか、少しでも繊維を柔らかくして着心地をよくしたかったのか、それとも生地の織目を詰めることで防寒効果を高めたかったのかも知れません。
いずれにしても、搗ちて染め上げたことから「搗色(かちいろ)」と呼ばれ、それが転じて褐衣を代表する色「褐色(かちいろ)」となったそうです。
ちなみに、現在「褐色」と言うと茶色っぽい色(暗い黄赤)を連想しますが、それも本来は粗末な布を意味する「褐」に由来しています。
そんな褐色は鎌倉時代になると「褐色=勝ち色」と縁起を担いだ武士たちから好まれるようになり、衣服だけでなく甲冑を縅(おど)す糸などにも勝色が使われるようになりました。
※出陣前の儀式「式三献(しきさんこん。三献の儀)」に供される「搗栗(かちぐり。勝栗)」と同じ縁起担ぎですね。
やがて武士の時代が終わりを告げ、明治時代に入っても軍服などに採用され、日露戦争(明治37・1904年~同38・1905年)当時においても「軍勝色(ぐんかちいろ)」として将兵の士気を高めたと言います。
質実剛健な武人たちの精神が宿る勝色をあしらった新モデルのG-SHOCK。ご自身で身に着けるのはもちろんのこと、大切な男性に贈るのも素敵ですね!
※参考文献:
吉岡幸雄『日本の色辞典』紫紅社、2000年6月
内田広由紀『定本 和の色事典』視覚デザイン研究所、2015年8月
石田結実『伝統色で楽しむ日本のくらし~京都老舗絵具店・上羽絵惣の色名帳~』マイナビ出版、2017年5月
※参考:MR-G – G-SHOCK