薄毛や抜け毛に悩む現代人はたくさん。今では薄毛専用の飲み薬が発売され「ハゲ」は治せる時代になりました。しかし、現代ほど医学が発達していなかった江戸時代。昔の人々は薄毛の悩みをどのように解決していたのでしょう?
頭部が寂しいのは恥ずかしかった?
日本には古来から、宗教的意味合いや儀式の装飾などでカツラやウィッグといった被り物を身に着ける習慣がありました。古く神話の時代には黒御鬘(くろみかづら)と呼ばれるカツラが登場します。
頭上を煌びやかに飾り付けることで威厳や権威の象徴としていたのかもしれません。だからこそ、頭部の髪の毛がなくなることは、当時の人々にとって恥であった可能性は想像に難くないでしょう。
「万葉集」にはカツラを詠んだ歌を確認することができます。中世には薄毛を気にした醍醐天皇の子女がカツラを使用したともいわれています。頭髪が寂しくなることでビジュアル的に劣等感を抱くことは、すでにこの時代の人々にも共通の価値観として浸透していた事実が伺えますね。
美意識の高まり
中世以前、髪の毛に対する主な記載は皇族や貴族女性など上流階級社会におけるエピソードが大多数をしめていました。しかし、江戸時代に入り社会情勢が安定したことで庶民にも美意識が浸透。髪の毛に関する資料も散見できるようになりました。
1800年代前期に出版された「都風俗化粧伝」には、庶民の美容や化粧に関する様々な記載を確認することができます。化粧の方法や髪の毛の洗い方など、現在のメイクマニュアル本に近い存在であった都風俗化粧伝。
中でも興味深いのは髪の毛を生やす手段に言及している章。なんと「毛生え薬」なる物が紹介されています。