究極のスピードラーニング 相撲部屋はガチ日本語塾

Japaaan編集部

またまた海外出身の横綱が誕生致しました。外国人力士として5人目の横綱になった日馬富士(はるまふじ)は、来日11年目のモンゴル・ウランバートルの出身。四股名(しこな)は日馬富士公平(こうへい)ですが、本名はダワーニャミーン・ビャンバドルジ(舌噛みそう…)。見た目よりも名前の方がモンゴル人ぽいですね。

外国人が横綱になる時に、たびたび「品格」が問題にされているようですが、彼らは日本人さえ敬遠してしまいそうな古いしきたりの残る角界に、果敢に挑戦している異国の若者です。「これだけ日本語がペラペラならいいんじゃないのぉ」と思ってしまいます。

特に日本語は「敬語」があるので外国人にはハードルが高い言語。話す相手が目上か目下かで一人称「わたくし」「オレ」、二人称「あなた」「おまえ」を言い換えることができるのは、かなり上級の日本語修得者だそうです。ろくに敬語を使えない若者が増える中で、外国人なのに敬語をマスターしているだけでも、「品格」の一部を備えていると言えそうです。

そんな難しい日本語がいつの間にやらペラペラになっているのが外国人力士の不思議です。NHKの相撲中継で、アナウンサーの質問に、時には冗談まで交えて答えてしまうモンゴルや東欧出身の力士たち。野球でもサッカーでも、外国人選手には通訳がいるのが当たり前ということを考えると、来日数年目の力士がよどみなく話す姿は、改めて驚きを感じます。

この日本語修得の秘密を取材・研究したのが、日本語教育を研究している早稲田大学の宮崎里司先生。先生は外国人留学生に日本語を教える立場から、来日した力士たちがどのように日本語を覚えているのかを、実際に相撲部屋を訪れて探りました。

その結果驚いたことに、彼らは「日本語学校」などには一切通っておらず、相撲部屋とその周辺の環境だけで日本語を修得しているというのです。しかも辞書などはなるべく使わず、兄弟子や女将さん、相撲部屋を応援する地域の人達とのコミュニケーションの中で、「生きた日本語」を身に付けていくんだそう。特に「敬語」をはじめ、日本の生活習慣を教える先生として、「女将さん」の役割は非常に重要だといいます。

まさに「ガチ相撲」ならぬ「ガチ日本語教育」。日本語だけでなく、相撲のしきたりや品格云々までを、問答無用に叩き込んでいくのが、力士にとっての「第二の母」である女将さんのようです。

これからの国際社会、相撲界の「女将さん」的なパワーの中に、海外との壁を取り除いていくヒントがあるのかもしれませんね。

外国人力士の日本語修得(宮崎里司研究室)

 

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