
大河『べらぼう』鳥山検校と五代目瀬川(小芝風花)の悲惨なその後…咲くも散りゆく4本の徒花【後編】
自由がない過酷な労働条件の吉原で働く遊女たちの平均寿命は、23歳弱と短命でした。
男と女が集まる吉原では、客が金を払って咲かせるかりそめの恋の花以外にも、奉公人と遊女、客と花魁などの間で本気の恋の花が咲くこともありました。
けれども、本気の恋の花ほど、咲いてもあっという間に枯れてしまう、短命の「徒花」だったのです。
【前編】では、お互いに唯一無二の存在であった蔦谷重三郎(横浜流星)と五代目瀬川花魁(小芝風花)の間に咲いた徒花、そんな瀬川と盲人・鳥山検校(市原隼人星)の間に咲いた徒花の2本をご紹介しました。
大河『べらぼう』鳥山検校と五代目瀬川(小芝風花)の悲惨なその後…咲くも散りゆく4本の徒花【前編】
【後編】では、悲惨に散った遊女・うつせみ(小野花梨)と浪人・小田新之助(井之脇海)の間に咲いた徒花、そして一夜限りの幻に涙した平賀源内(安田顕)と瀬川の間に咲いた夢の徒花についてご紹介しましょう。
地獄から抜け出す優しい遊女と浪人が散らせた悲劇の徒花
3本目の恋の徒花は、妓楼・松葉屋の遊女うつせみ(小野花梨)と、浪人・小田新之助(井之脇海)の間に咲いた徒花です。
うつせみは「座敷持(ざしきもち)」というランクの遊女です。「座敷持ち」というのは、自身が寝起きする部屋のほかに、客の相手をするための座敷が与えられていた遊女のことで、松の井や花の井(久保田紗友)のように花魁道中は行いません。
うつせみは実在の人物で、安永4年(1775)発行の『吉原細見』に、妓楼松葉屋に「座敷持ち」のランクで名前が記されているそうです。
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かたや、恋人の小田新之助は、御家人の三男坊として生まれものの出奔し、なぜか平賀源内と共に「炭売り」をしながら長屋暮らしをする浪人。蔦重の案内で行った松葉屋、うつせみと出会い惚れてしまいます。
うつせみは、中堅ランクながらも売れっ子で、性格は控えめで「わっちなんて…」と自信なさげな言葉もいいますが優しく健気な女性です。新之助は過酷な妓楼で働きながらもやわらかい空気を纏う、うつせみを本気で好きになっていくのでした。