Japaaan読者の皆さんこんにちは、ライターの小山桜子です。ステイホームの今こそ、日本が誇る「浮世絵」の事に詳しくなっちゃおう!というわけで、今回は有名すぎて逆にスルーしがちなこちらの浮世絵、喜多川歌麿「婦女人相十品 ポペンを吹く娘」を解説します。
作品の時代背景
この作品が出版されたのは寛政5(1792)年ごろ。幕府老中・松平定信が厳しすぎる寛政の改革のために失脚し、5年ほど続いた出版規制がようやく軟化しはじめた時期でした。しかも当時美人画のトップだった鳥居清長が芝居小屋の看板絵に専念するようになり、「美人画の一番手」のポストがうまいこと空いていたのです。そこにスポッとハマって一躍ヒットしたのが歌麿でした。
歌麿がバズった理由
歌麿大ヒットの理由は、それまで役者絵にしか使われていなかった「大首絵(おおくびえ)」というバストアップ、顔面アップの手法を美人画にも取り入れた事。
江戸時代の人々は、テレビもスマホも電気もない中で、女性の顔や髪の毛や首すじを近くでまじまじ眺める機会なんて、自分の女房以外なかったんです(遊女はたぶん部屋の照明が暗すぎて細部までは見れなかったはず)。
しかも江戸の町の男女比は6:4くらいで独身男性が非常に多かった。そういう人たちの「女の子を間近で見てみたい」というニーズに応えた事でバズったんです。
ポペンを吹く娘
中でも特に有名なのが「ポペンを吹く娘」。
さて、このぽぺんって何だかご存知ですか?室町頃にオランダ人から伝わったおもちゃで、吹くとポッペン♪と鳴ります。実物の写真がこちら。
注目ポイントは、当時女性を間近で見る機会がなかった人々がドキドキしちゃうくらいリアルな描写!髪の生え際やほわほわのおくれ毛など、歌麿のフェチがだだ漏れてるんです!
しかも彼女が着ているのは緋色の市松模様に桜の花を散らした華やかな大振袖。背景は桃色にきらきら光る紅雲母摺(べにきらずり)。
恋とか春とか、そんなふわふわした空気感がよく表れています。あたたかな春風が吹いて、その袖がふわりとそよぐ。そんな一瞬を歌麿はフェチ満載で切り取ったんです。