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最初から天才なんていない!葛飾北斎の「波」が完成されていく経過を追ってみました

最初から天才なんていない!葛飾北斎の「波」が完成されていく経過を追ってみました

出来に満足いかず、また波を描く

1805(文化2)年、北斎が46歳で描いた『おしおくりはとうつうせんのづ』。前回は壁のようだった波に陰影が加えられ、色も深い青で波らしくなっています。うねりが幾重にも押し寄せ、荒々しくうねる高波、立ち向かう押送り船にグレートウェーブの鱗片が見て取れます。

しかし北斎、「まだだ。まだ足りねえ・・・」と思ったのか、その後も真摯に波と向き合い続けます。

北斎漫画でも波を描く

北斎は彩色されていない、モノクロの波も描いていました。

キテます。明らかに近づいてきてます。波の飛沫が生き物のように妖しくうごめき、北斎の波が徐々に生命を宿し始めているのが分かります。

ついに北斎の波が完成

波に魅了されて早40年。1831(天保2)年、72歳を迎えた北斎は、ついに「グレートウェーブ」を完成させました。

過去最大ながらも不自然さがなく反り返る高波、禍々しい鉤爪のようにするどく千切れる飛沫、翻弄される押送船と人々、奥には静かにそびえる富士山。葛飾北斎の描く波が一つの完成形にたどり着きました。

北斎の波の最終形が描かれた場所

しかし「百十歳にして一点一画生けるがごとくなるだろう」と語った北斎にとっては、この波もまだまだ通過点に過ぎなかったのでしょう。北斎最晩年の波の絵が、こちらです。

なんとこの作品は、長野県小布施町の祭りの屋台に描かれた天井絵でした。もはや波を描かせたら北斎の右に出る人はいません。

北斎の残した数々の波を目にするたびに、「本気で何かを成し遂げたいと思うなら、何度でも挑めよ。何度でも、何度でもやるんだ」と言われているような気がしてなりません。だからこそ人々は、国境も時代も超えて、北斎の波に魅了し続けられるのでしょう。

Images:Wikipedia『賀奈川沖本杢之図』、『おしおくりはとうつうせんのづ』、『神奈川沖浪裏』、『上町祭屋台天井絵 怒涛図 女浪(部分)』.国立国会図書館デジタルコレクション『北斎漫画. 2編』、『北斎漫画. 7編』.大英博物館『江ノ島春望

 

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